WISC-V知能検査(児童向けウェクスラー知能検査 ウィスク・ファイブ)とは?

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先日、わが子が小児精神科で診断テストを受けてきました。

前回までの記事で、病院での出来事や流れを中心に説明してきました。
本記事では、どんな診断テストを受けてきたのかをわかりやすく解説いたします。
※私は専門家ではないため、一部情報に誤りがある場合もありますのでご了承ください。

WISC-V知能検査(児童向けウェクスラー知能検査 ウィスク・ファイブ)の概要

WISC-V知能検査(児童向けウェクスラー知能検査 ウィスク・ファイブ)とは?

WISC-Vは、Wechsler Intelligence Scale for Children - Fifth Editionの略称で、6歳から16歳11か月の子どもや青年を対象に、認知能力や知能指数(IQ)を評価するための知能検査です。

ウェクスラー式知能検査の最新版(第5版)で、特に学習や発達に関する検査に広く使用されています。
WISC-Vは単にIQを測るだけでなく、5つの主要な認知領域を評価し、それぞれの領域は子どもの知的な強みや弱みを把握し、適切な教育やサポートを提供するための手掛かりとなります。
言語能力、視覚処理、論理的思考など、多面的な認知スキルを詳しく知るのに役立ちます。

教育現場や医療機関では、発達障害(ADHDや自閉スペクトラム症)や学習障害(LD)の評価にも多く用いられ、結果に基づき子どもたちに適切な支援や教育計画が提供されます。
WISC-Vは、子どもの学習支援や学校での適応を助けるための有効なツールです

WISC-V知能検査(児童向けウェクスラー知能検査 ウィスク・ファイブ)の特徴

WISC-Vは、以下の5つの主要な指標に基づいて知能を評価します。

言語理解(VCI)
言語能力や推論力を評価し、語彙や言葉の使い方に関する理解力を測定します。

視空間認知(VSI)
視覚的・空間的情報の処理能力を評価し、パズルや図形を用いて視覚的分析力を測定します。

流動推理(FRI)
新しい問題に対して論理的に考える能力や、パターンの認識能力を測定します。

ワーキングメモリ(WMI)
短期間での情報保持や操作能力を評価し、数や記号を記憶・操作する力を測定します。

処理速度(PSI)
視覚情報の処理速度と正確さを評価し、限られた時間内でどれだけ速く正確に作業ができるかを測定します。

これらの指標は、全体のIQ(全検査IQ: FSIQ)だけでなく、個々の能力における強みや弱みを明確にし、学習や生活上の特性を把握する手助けとなります。

言語理解(VCI: Verbal Comprehension Index)

言語理解は、言語を使った知識や推論力、言語的な概念を正しく理解する能力を測定します。

具体的には、語彙力や言葉の意味を理解し、それを日常生活や問題解決にどう応用するかが重要な領域です。
このスコアは、子どもの言語によるコミュニケーション力や、言葉を使って物事を説明したり、概念を捉えたりする力を示します。
特に、抽象的なアイデアや複雑な言語課題に対応する能力も評価されます。

例:この領域が高い子どもは、語彙が豊富で、難しい言葉や概念を理解しやすい傾向があります。反対に、この領域が低い場合、言葉を使ったコミュニケーションや抽象的な思考に苦労することがあります。

視空間認知(VSI: Visual-Spatial Index)

視空間認知は、視覚的な情報を処理し、空間的な関係を理解する能力を測定します。

たとえば、図形を正確に認識して再現したり、パズルの形状を適切に組み合わせたりする能力です。
このスコアは、視覚情報を正確に把握し、空間的に整理する力を反映します。
視覚と空間の情報を結びつけて問題を解決する能力が、特に数学や理科の学習に影響します。

例:視空間認知が高い子どもは、積み木やレゴのような立体的な遊びが得意で、図形の模写や空間把握を必要とする課題に強い傾向があります。逆に、この領域が低いと空間把握が苦手で、迷路や図形パズルに苦労することがあります。

流動推理(FRI: Fluid Reasoning Index)

流動推理は、新しい問題や未経験の状況に対して、論理的に考え適切な解決策を見つける能力を測定します。

過去の経験や知識に頼らず、抽象的なパターンを見つけて問題を解決する力です。
流動推理が高い子どもは、学習や思考の柔軟性が高く、創造的な問題解決を得意とすることが多いです。

例:流動推理が高い子どもは、新しい問題でもすぐにパターンを見つけ、効率的に解決策を考え出せます。この領域が低い場合、未知の問題や新しい課題に柔軟な対応が難しく、解決までに時間がかかることがあります。

ワーキングメモリ(WMI: Working Memory Index)

ワーキングメモリは、短期間に情報を保持しながら、それを使って問題解決や作業を進める能力を測定します。

特に、複数の情報を同時に処理する場面で重要な役割を果たします。
このスコアが高い子どもは、記憶した情報を素早く取り出し、同時に別の情報と関連付けて使うことが得意です。
この力は、学業では計算問題や文章の理解に大きく影響します。

例:ワーキングメモリが高い子どもは、長い指示や複雑な課題をスムーズにこなすことができます。反対に、この領域が低い場合、複数のステップが必要な作業や長い指示を覚えるのが難しく、作業効率が低下することがあります。

処理速度(PSI: Processing Speed Index)

処理速度は、視覚的な情報を迅速かつ正確に処理する能力を測定します。

単純な作業を繰り返す際、どれだけ早く正確にこなせるかを測ります。
処理速度が高い子どもは、日常生活や学校での課題に迅速に対応し、タスクを早く完了することができます。
このスキルは、時間制限のあるテストや作業の進行に影響します。

例:処理速度が高い子どもは、問題をスピーディに解き、テストや課題も迅速に終わらせます。逆に、処理速度が低い場合は、情報処理に時間がかかり、時間内にテストや課題が終わらないことが多いです。

WISC-V知能検査(児童向けウェクスラー知能検査 ウィスク・ファイブ)のメリットとデメリット

メリット
多面的な認知能力の評価:単なるIQスコアではなく、さまざまな認知スキルを評価できるため、子どもの得意分野とサポートが必要な分野が詳細にわかります。
発達・学習障害の評価に有効:WISC-Vは、発達障害や学習障害の診断や支援計画に役立ちます。どの分野で特に困難を感じているのかを具体的に把握することができます。
教育支援の向上に寄与:WISC-Vの結果を基に、個別指導計画(IEP)が作成され、子どもの学習スタイルに合わせた指導法が適用されます。

デメリット
時間とコストの問題:1対1で実施するため、時間がかかり、費用も高くなることが多いです。検査を受ける子どもや保護者にも負担がかかる場合があります。
結果の解釈が複雑:結果にばらつきがある場合、その解釈や教育・生活にどう活かすかには専門知識が必要です。
文化的・環境的影響:WISC-Vは文化的背景や育った環境に影響されやすいため、異なる文化的背景の子どもに対しては、結果が必ずしも正確に反映されないことがあります。

WISC-V知能検査(児童向けウェクスラー知能検査 ウィスク・ファイブ)診断結果パターン例

WISC-Vの診断結果は、下のような折れ線グラフや表に示されています。

この診断結果を見ながら、先生に説明してもらいます。

WISC-V知能検査(児童向けウェクスラー知能検査 ウィスク・ファイブ)診断結果サンプル

引用元:Pearson Clinical Assessment WISC-V A&NZ Interpretive Considerations for Sample Report (06/03/2016)

WISC-Vの診断結果の指標ごとに特徴を細かく分類し、わかりやすく整理しました。
実際の診断結果は、これらのパターンを掛け合わせて複雑になりますが、診断結果を解析する時の参考にして下さい。

診断結果パターン指標の組み合わせ特徴サポート内容
バランス型全指標が平均以上で均等全体的に知能指数が高く、特定の指標に偏りがないバランスの取れた発達を維持しながら、さらに高度な学習を提供
言語理解優位型言語理解(VCI)が高く、他の指標は平均的語彙力や言語表現力が優れており、言語を使った学習やコミュニケーションに強みがある言語表現の発展を促しつつ、処理速度や視覚的な課題を補う
視空間認知優位型視空間認知(VSI)が高く、他の指標は平均的視覚情報の処理や空間認知が得意で、図形やパズルに強い視覚的学習を活かし、言語理解や記憶力の強化をサポート
流動推理優位型流動推理(FRI)が高く、他の指標は平均的新しい問題に対する柔軟な思考や、論理的な推論が得意問題解決力を伸ばしながら、処理速度や記憶力の向上を目指す
ワーキングメモリ優位型ワーキングメモリ(WMI)が高く、他の指標は平均的短期記憶や情報の保持・操作に優れているワーキングメモリを活用した課題に取り組みつつ、流動推理の強化を目指す
処理速度優位型処理速度(PSI)が高く、他の指標は平均的簡単な作業を迅速に処理する能力が高い処理速度を活かした課題を提供し、複雑な思考力を伸ばす
言語理解劣位型言語理解(VCI)が他の指標に比べて低い言語を使った学習や表現に苦手意識があり、コミュニケーションに課題が見られる視覚的・論理的な学習を取り入れ、言語表現力の強化を図る
視空間認知劣位型視空間認知(VSI)が他の指標に比べて低い空間的な認識や視覚情報の処理が難しく、図形やパズルに苦労する視覚情報の処理を鍛えるトレーニングを提供する
流動推理劣位型流動推理(FRI)が他の指標に比べて低い新しい問題への対応や、論理的な推論に困難が見られる問題解決能力を養い、論理的な思考を発展させるサポートを提供
ワーキングメモリ劣位型ワーキングメモリ(WMI)が他の指標に比べて低い情報を一時的に保持し、操作する能力に課題があり、複雑な指示に従うのが難しいワーキングメモリを強化するトレーニングを実施し、簡略化された指示の提供を行う
処理速度劣位型処理速度(PSI)が他の指標に比べて低い作業速度が遅く、時間内に課題を終えるのに苦労するスピードを重視しない課題を提供し、作業時間の延長を検討する

まとめ

WISC-Vについて、多少なりとも理解を深めることができましたか。

診断テストの結果がすべてではありませんが、診断テストの結果を参考にして得意なところをもっと伸ばし、苦手なところを克服するため、的確な行動に移すことができます。
本記事の内容が、最後まで読んでいただいた皆さんの、身近な大切な人のお役に立てれば幸いです。